英国バレエの名門が7年ぶりの来日──輝く新星・栗原ゆう、オーロラ姫に挑む

英国バレエの名門・バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)が、7年ぶりに来日する。上演されるのは、英国バレエが誇る二大名作『眠れる森の美女』と『シンデレラ』。2019年に同団へ入団後、異例のスピードで数々のプリンシパルロールを踊り注目を集めているのが、ファーストソリストの栗原ゆうだ。今回が初の来日公演出演となる彼女が、自身の言葉で舞台の魅力とその裏側にある思いを語った。

写真:Tristram Kenton

「ピュア、華、気品。オーロラ姫を表すとしたら、そんな言葉が浮かびます」。6月21日(土)の『眠れる森の美女』でオーロラ姫を演じる栗原は、大型連休中に開催された〈上野の森バレエホリデイ〉のトークイベント「オーロラトーク」に登壇。「公演回数が多いからこそ、今日はこういう気持ちでやってみよう、と毎回オーロラ姫の人柄や性格をどう伝えるかを考えている」と語った。衣装やセット、音楽など、クラシックバレエならではの総合芸術としての美しさも舞台の大きな魅力だと話す。

左:山本康介(元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団ファーストソリスト)
中央:栗原ゆう(英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団ファーストソリスト)
右:沖香菜子(東京バレエ団プリンシパル)
写真:Ayano Tomozawa

ここでは、イベント後に行われたインタビューから、栗原の素顔に迫る一問一答をお届けする。

――お客様の前で話すトークイベントはいかがでしたか?

しゃべるのは苦手なので緊張しました。でも司会の山本康介さんがフォローしてくださって、楽しかったです。

――トークイベントで印象に残ったことは?

東京バレエ団の沖さんとは、同じ『眠れる森の美女』でもバージョンが違うので、ものすごく新鮮でした。一緒にトークできて良かったです。

左:栗原ゆう 右:沖香菜子 写真:Ayano Tomozawa

――『上野の森バレエホリデイ』のイベントについてどう思いましたか?

こうしてイベントが開かれて、バレエをもっと身近に知ってもらえるのはダンサーとしても嬉しいですね。

――バレエは敷居が高いと感じる人もいますが?

もちろんそう思います。チケットが高いと感じたり、会場に足を運ぶのも少し勇気が必要だったりするかもしれません。しかし、その分の経験が出来ると思います。私たちもその価格に見合う体験を届けられるように準備しています。絶対に来てよかったと思ってもらえる舞台にしたいと思っています。

――今回の来日公演で注目してほしい点は?

BRBの作品はどれも歴史が深くて、振付や音楽の理解もすごく高い。衣装やセットのこだわりも感じられるので、そういった点も含めて“総合芸術”として楽しんでほしいです。

写真:Tristram Kenton

――10代での留学は大きな経験だったのでは?

最初は文化の違いやカルチャーショックもありました。でも“ショック”を受けるよりも、違いにどれだけ気づけるかが重要。日本人らしさを大切にしながら、文化をうまく取り入れていくことが大事だと思っています。

――海外生活で印象的だったエピソードはありますか?

 引っ越したとき、お隣さんがすごく親切で。私はけっこうシャイなんですけど、向こうがフレンドリーだと、私も“もっと知りたい”って思えるタイプで。そういう出会いに支えられてきました。

――オフの時間の過ごし方は?

ピアノを弾いたり、油絵を描いたりしています。絵は想像して描くことが多いですね。趣味ですが、自分の気持ちが目に見える気がして面白いです。バレエのことは家に帰ったらなるべく考えないようにしています。人間としての形が整ってくると、バレエにも活かされるので。休日は、友達と食事したり、家に呼んだりもします。

――これから挑戦したい役は?

 ドラマチックな作品が好きなので『ロミオとジュリエット』や、レパートリーにはありませんが『マノン』、それから『白鳥の湖』も怪我でまだ踊れていないので挑戦したいです。

写真:Tristram Kenton

――最後に、日本の観客へメッセージをお願いします!

来日公演が初めてなので緊張します。日本で育ててくれた皆さんに恩返しとして、舞台で気持ちを共有できたら嬉しいです。楽しみにしています。

透明感のある表現と、舞台へのひたむきな姿勢。栗原ゆうの踊りには、今この瞬間を全力で生きる若さの輝きがある。伸びやかに広がる未来を予感させるその姿に、多くの観客が心を奪われることだろう。

写真:Tristram Kenton

<公演概要>
『眠れる森の美女』
【上演時間 約3時間(休憩2回含む)】
■東京公演
6月20日(金) 18:30 (エリサ・バデネス×マチアス・ディングマン)
6月21日(土) 14:00 (栗原ゆう×ラクラン・モナハン)
6月22日(日) 14:00 (エリサ・バデネス×マチアス・ディングマン)
会場:東京文化会館(上野)

■堺公演
7月2日(水) 18:30 (セリーヌ・ギッテンス×ブランドン・ローレンス)
会場:フェニーチェ堺 大ホール

■名古屋公演
7月5日(土) 14:00 (セリーヌ・ギッテンス×ブランドン・ローレンス)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

『シンデレラ』
【上演時間 約2時間30分(休憩2回含む)】
6月27日(金) 19:00 (平田桃子×ウィリアム・ブレイスウェル)
6月28日(土) 14:00 (ベアトリス・パルマ×マックス・マズレン)
6月29日(日) 14:00 (平田桃子×ウィリアム・ブレイスウェル)
会場:東京文化会館(上野)

(取材・文:和田弘江)

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