脚本家・宮藤官九郎『ゆとりですが…』映画化のきっかけは、松坂桃李が雑談でポロっといった一言

2023.8.26 10:00

映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』の完成報告会見が、8月23日に都内で行われ、メインキャストの岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥らと、脚本家の宮藤官九郎、水田伸生監督が登場した。

2016年に日本テレビ系列で放送された連続ドラマ『ゆとりですがなにか』が映画化。このドラマは第67回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど、その年のドラマ賞も総ナメにした人気作品だ。

岡田、松坂、柳楽が演じるゆとり世代の3人組も30代の半ばを迎え、家族や仕事など人生の試練が立ちはだかるなか、Z世代、働き方改革、コンプライアンスと新時代の波が押し寄せる。平成から令和へと時代を超え、サブタイトルの“インターナショナル”のとおり国境までも越えてしまうのかと思いきや、宮藤官九郎の口から映画化の意外な経緯が語られた。

■映画化のきっかけは松坂桃李との雑談

宮藤は会見のあいさつで「ゆとり世代というくくりで、すごくこぢんまりした話をやっていたつもり。今回タイトルがインターナショナルということなんですけど、全く同じスケールです(笑)」と説明。『インターナショナル』というサブタイトルの意味や、映画化の経緯について明らかにした。

ある日、別の現場の打ち上げで松坂と会う機会があったという宮藤。そこで松坂からアメリカのコメディー映画『ハングオーバー!』シリーズの登場人物たちが、ゆとりの3人たちとダブって見えたことから「ハングオーバーの感じでできませんかね?」と言われ、宮藤は「あっいいじゃん!」と、すぐに水田監督に相談。「じゃあ海外ロケだ!インターナショナルってタイトルつけましょう」と、トントン拍子に映画化が決まったそうだ。

松坂は一連の出来事について「宮藤さんに雑談くらいの温度感で話したら、そういうことに運んでくださった。元々3人でもまたやりたいねと話していたので、言ってみるもんだなっていうのを実感しましたね」と振り返った。

■八王子から高円寺で“インターナショナル感”を

ところがコロナ禍の影響などもあり「ゆとりの人たちなら海外に行かなくても、日本にいっぱい外国の人いるし、八王子から高円寺の間でインターナショナル感を出せるんじゃないか」と、海外ロケを断念したことを明かした宮藤。サブタイトルには『インターナショナル』の文字がそのまま残る形となったが、宮藤はこれはあくまで「海外に行くつもりだったって言う意味のインターナショナルです。名残ですね(笑)気持ちだけ行っちゃったみたいな」と話し、笑いを誘っていた。

また柳楽が演じる道上まりぶは、本作では事業に失敗し、中国から帰ってきたフリーターという設定。そのため中国語をはじめ外国語のセリフが多く、覚えるのに苦労したそうだ。文法などもさっぱりだったため、どの単語がどういう意味なのかもわからず、耳で覚えて記憶してひたすら練習したという。

そんな柳楽について岡田は「すごかったです。さすが柳楽優弥って思うぐらい完璧。やっぱりストイックな方なので、本当に素晴らしいなと思いました」と絶賛。すると柳楽は「ありがとうございます。あっ謝謝(シェイシェイ)」と、突然“インターナショナル感”を出すなど、息のあった掛け合いで会場を笑わせていた。

■インターナショナルな“今の時代”を感じさせる仕上がりに

もともと2020年10月のクランクインを目指していたという本作。撮影は2年後に延期となってしまったものの、その間も出演交渉を続け、結果的に念願かなってドラマ時からのキャストが全員そろったそうだ。宮藤にとってはコロナ禍をまたいだ唯一の脚本となる。
宮藤は執筆した当時を振り返り「コロナ禍になる前から考えていた話が、コロナで時間が伸びたりなんかして、その間にすっごい世の中がまた変わってきていて、それに合わせて地道に直して、色々合わせていったんですけど」と述懐。

コメディー作品でありながら、ユーモアにくるみつつ社会問題を鋭く突くのが、ゆとりシリーズの醍醐味(だいごみ)でもある。今回もLGBTQ、ハラスメント、国際問題、SNSとの向き合い方などを描き、すっかり定着したリモートワークを随所に入れ込むなど、今の時代を感じさせる仕上がりになっているようだ。

宮藤「この時代だから、今だから彼らはどう行動するか、何を考えるかっていう作品になっている気がしました。根底には社会の鏡じゃないですけど、ゆとりの3人は今の世の中をこう思っているんだっていうのをすごく感じました。日本にいろんな外国の人が生活していて、インターナショナルなんだなっていう、最初に自分が考えたところに戻ったような気がしました」

映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』
10月13日より全国東宝系にて公開
出演:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥ほか
脚本:宮藤官九郎
監督:水田伸生

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