「映像化不可能」と言われた綾辻行人の傑作ミステリー小説『十角館の殺人』まさかの実写映画化

2023.12.22 19:15

全世界シリーズ累計670万部の大ベストセラー「館」シリーズの記念すべき1作目にして綾辻行人史上最高傑作の呼び声高い作家デビュー作『十角館の殺人』の待望の実写映画化が決定した。

綾辻行人はミステリー文学の発展に寄与した作家や評論家に贈られる『日本ミステリー文学大賞』を2019年に受賞し1992年には『日本推理作家協会賞』を受賞した、日本を代表するミステリー作家。

緻密かつ巧妙な叙述トリックで読者をその世界に引き込みながらも、たった1⾏で事件の真相を描くという大胆な手法でミステリー界に衝撃を与えた『十角館の殺⼈』。その特異性から、⻑年映像化は不可能と言われ続けてきた作品でもある。

そして今なお色あせることのない本作の功績がたたえられ、2023年10⽉に発表されたタイム誌が選ぶ【史上最高のミステリー&スリラー本】オールタイム・ベスト100に選出され、ドストエフスキー『罪と罰』、アーサー・コナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』、スティーヴン・キング『シャイニング』、トマス・ハリス『羊たちの沈黙』など世界の名だたる作家そして名著と肩を並べることとなった。

物語の舞台は1986年、十角形の奇妙な外観を持つ館“十角館”が存在する角島(つのじま)。この館を建てた天才建築家・中村⻘司(なかむらせいじ)は、焼け落ちた本館・⻘屋敷で謎の死を遂げていた。半年後無⼈島と化していた角島に、大学ミステリ研究会の男⼥7⼈が合宿で訪れる。その頃海を隔てた本土では、かつてミス研メンバーだった江南孝明(かわみなみ・たかあき)のもとに死んだはずの中村⻘司から1通の手紙が届く。江南は調査を進めるなか、島田潔(しまだきよし)という男と出会い、⾏動を共にしていく。一方“十角館”では、ミス研の1⼈が何者かに殺害される。「犯⼈は一体誰だ︖」疑⼼暗⻤に陥り、互いに仲間を疑いはじめるメンバーたち。孤島である角島から出ることができるのは1週間後。2つの物語から起こる想像を超えた衝撃の結末とは。

映像化不可能と叫ばれ続けた『十角館の殺人』の映像化に挑むのは内片輝(うちかた・あきら)監督。ハリウッド仕込みの映像演出で緊張感のある作風を得意とする。以前から親交のあった綾辻行人へ、『十角館の殺人』の映像化を打診したという内片監督は、20年間夢見たという映像化プロジェクトの実現をついに果たした。

■綾辻行人 インタビュー

―――内片輝監督から『十角館の殺人』を実写化したいと言われた時の感想

どうやって実写化するの?できるの?という疑念をやはりまず抱かざるをえませんでした。ただ内片監督はかつて、非常にマニアックかつアクロバティックな犯⼈当てドラマ「安楽椅子探偵」シリーズ(有栖川有栖さんと綾辻の共同原作による深夜枠のTVドラマ)を計7作、撮ってくれた⼈です。その内片さんが「やりたい」と云(い)うのだから、何か彼なりの(実写化のための)アイデアがあるのだろうな、とは思いました。

―――1987年9⽉から36年の時を経て、今この時代に映像化されることについての感想。現在も「館」シリーズを書き続けている綾辻⾏人さんにとって、デビュー作でもある『十角館の殺人』の存在について

「映像化不可能」と云われつづけてきた⼩説です。アニメならまだしも、実写ではとうてい無理だろう、と僕自身も考えていたので、今になって本気でそれにチャレンジしようという企画が成⽴してしまったのは驚きでした。36年前のデビュー作が時代・世代を超えて今なお多くの⼈に読まれつづけている、というのは本当に幸せなことです。そんな未来など微塵(みじん)も想像せずに書いた『十角館』でしたが、ここまで来ると「偉いねえ、きみ」とたたえてあげたい気分です。

―――先日発表された、タイム誌が選ぶ【史上最高のミステリー&スリラー本】オールタイム・ベスト100に『十角館の殺人』が選出された際の気持ちと本作のどういった部分が選ばれたと思うか

ひたすらうれしく、夢のように感じました。『十角館』よりも優れた本邦のミステリーはいくらでもあるので、何だか申しわけないような気も。ただ、この作品が結果として、当時の日本のミステリーシーンに画期的な変化をもたらすきっかけになったことは確かなので、選出にあたってはおそらく、そういった歴史的な位置づけも相応に勘案されたのだろうと想像します。

―――実写化を楽しみにしているファンへのメッセージ

原作をすでに読んでおられる⼈にとっては、気になるのはやはり、「映像化不可能」であるはずのメインの仕掛けをどうやって「可能」にしているか、という点でしょうから、まずはその興味でご覧ください。ですがその試みが成功しているか否かについては、原作を読まずに観た⼈の感想を伺うしかないわけです。そのあたりなかなか向き合い方がむずかしい作品かもしれませんね。ともあれ、内片監督渾身(こんしん)の作であることは間違いないはずです。どんな仕上がりになるのか、僕も大いに楽しみにしています。

©綾辻行人/講談社

『十角館の殺人』はHuluにて2024年3月22日独占配信。

写真提供:©綾辻行人/講談社 ©NTV

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