辻村深月 『かがみの孤城』で『ドラえもん』のルーティンを発見し興奮「さすが原恵一」

2023.1.30 13:00

映画監督の原恵一、作家の辻村深月が27日、東京・新宿ピカデリーで行われたアニメ映画『かがみの孤城』(公開中)のトークイベントに出席。辻村が、映画を見返して発見したことなどを語った。

原恵一監督(左)と原作者の辻村深月(右)

作品は『2018年本屋大賞』を受賞した辻村の同名ベストセラー小説が原作で、鏡の中の世界にいざなわれた主人公の中学生・こころの葛藤や成長を描くファンタジーミステリー。昨年12月23日に公開され、SNSや レビューサイトで“泣ける映画”と話題になっている。

「原監督のアニメーションを見て育った」という辻村は、映画の公式サイトにも掲載されている自身のコメント「私が描いた通りのこころたちがいて、描いた通りの感情と時間がそこにありました。原監督に彼らの孤城をお願いできて、本当に良かったです」を持ち出し、公開から約1か月が経過した現在の心境を「その通りの気持ちです。一つの映画を通じて原さんと大人同士で一緒にお仕事ができたということが、とてもうれしいです」と表現。原監督も「辻村さんから、その言葉をもらったのが、すごくうれしかった」と明かした。

書き込みが入った自身の台本を手にトークをする原恵一監督

アニメ『ドラえもん』や『エスパー魔美』などの人気作に携わってきた原監督は、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲 』『河童のクゥと夏休み』を手掛けたことでも知られ、“泣けるアニメーションの名手”との呼び声も高い。さまざまな伏線がはられている本作でも繊細な心情描写に定評のある原監督の演出が光っていて、辻村は「私も原監督のファンなので、監督が原作を超えたもの、原作に書かれていないけど、こころたちが過ごしていたかもしれない時間を作ってくれたっていうのは、“監督性”が爆発した部分だと思っていて、すごくうれしくて。最後の最後まで妥協なく監督が試行錯誤を重ねてくださったんだなと思って、お仕事ぶりが間近で見られてすごく幸せでした」と監督の手腕を改めて称賛。

完成作品を見るたびに発見することもあったそうで、辻村は「個人的にグっときたのが、こころが初回、靴下で(鏡の中に)吸い込まれていくんですけど、2回目から靴を用意していくんですね。これ皆さん、何かで見たことがあると思いませんか?」と観客に呼びかけ、「私、『ドラえもん』の脚本をやったから分かるんですけど、『ドラえもん』でどこかの世界に冒険に行く時に必ずやるルーティンの一つなんですよ。そこを原さんがこうやって描かれているのを見て、“さすが原恵一、抜かりがない”と、ものすごく感動しました」と脱帽した様子だった。

原恵一監督は“泣けるアニメーションの名手”との呼び声も高い

この日のイベントは上映終了後の観客が対象でもあり、辻村は「ネタバレしていいんですよね? 今までネタバレできない中でいろいろ言うのが本当に苦しかった」と、原監督とともに深いトークを展開した。サービス精神がおう盛な原監督が「世間はネタバレを嫌う」ことを実感したという過去の思い出として、映画『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』にまつわる若いころのエピソードを持ち出すひと幕も。「公開初日に朝イチで見に行って、見終わって興奮して友達の家に走って行ったんですよ。そこにたまたま他の友達も2、3人いて、ちょうどいいと思って“おーい、大変だ。ダース・ベイダーはルークのお父ちゃんだったんだよ”と言ったら、友達みんなが固まっていて“ああ、もう見る気がなくなった”って…」と監督が回想して苦笑いすると、辻村は笑顔で「いいですね、当時の原青年の興奮が伝わってくる」と合いの手を入れた。

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