映画『有り、触れた、未来』主演・桜庭ななみが明かす撮影秘話 「あの後半のシーンはもともと台本に無かったんです」

2023.3.17 19:30

映画『有り、触れた、未来』(全国公開中)で主演を務めている俳優・桜庭ななみ。恋人を事故で失った元バンドマンという役柄で、傷と立ち向かいながら歩み“生きる”ということを実感する力強い女性を演じた。同映画は3月3日(金)に宮城県での先行上映を皮切りに、3月10日(金)からは全国で上映を開始。SNS上では「“生”や“結”を意識させる、見てよかったと思える作品」「やりたいことをやれている日常に幸せをかみ締めました」などと、称賛のコメントが寄せられている。

entax取材班は桜庭ななみに独自取材を行い、「ほぼ初心者」というバンドの演奏シーンや実の母からのアドバイス、さらには撮影中に桜庭のアイデアをきっかけに出来上がったというクライマックスシーンの誕生秘話まで詳しく話を聞いた。

■それぞれが生きる意味を見出す『5つの物語』

――まずは映画の見どころを教えてください。
桜庭 この物語は『5つの物語』があって、それらが交差している群像劇となっています。いろんな登場人物がいて、それぞれ大切な人を亡くしてしまったり、震災で家族を亡くしてしまった方がいたり、自分の人生の分岐点で葛藤してる人がいたり。

――桜庭さんはどんな役を?
桜庭 私は元バンドマンの役で、バンドメンバーの中にお付き合いしてる彼がいたんですけど、その彼が10年前に交通事故で亡くなってしまって、“彼が残した楽譜”を見て、自分の中でまた頑張って生きようとする女性を演じています。

桜庭ななみ演じる元バンドマンの保育士『佐々木 愛実(めぐみ)』©️UNCHAIN10+1

■2ヶ月間の特訓で身につけた『ギター』スキル

――元バンドマンということで、劇中でもギターを演奏されていましたね。
桜庭 ギターは本当にほぼ初心者で、昔、(別の)映画の中で弾かせてもらったことがありました。また今回もイチから形とか持ち方とか、そこから教えてもらいながら今回の映画に参加しました。

――劇中の演奏シーンは、とても初心者には見えませんでした。
桜庭 撮影に入る2ヶ月くらい前から先生とマンツーマンで練習したり、お家でも練習して。ただ全部の弦を薬指で押さえて、さらに人差し指で別のコードを押さえるというのがとても難しくて、そこは苦戦しました(笑)

愛実の母親を演じる仙道敦子(右)と父親役の杉本哲太(左)©️UNCHAIN10+1

■仙道敦子さんと演じた“母娘”はリアルな関係に近かった

――注目してほしいシーンはどこですか?
桜庭 私と『お母さん』のシーンです! 仙道敦子さんが演じられているんですけど、お母さんとのシーンは注目して見てほしいです。言葉のやりとりは少ないですけど、つながってる家族のきずなだったりとか、結末っていうのも最後まで見届けてほしいと思っています。やっぱり私の母もそうですし、今回のお母さん(仙道さん)もそうですけど、“子供に心配かけたくない”っていう“見せない部分”が似ていたので、“娘の感じ方”とかはすごくリアルに近い部分があったかなと思います。

――桜庭さんの実際のお母さんとは、この映画について何かお話しましたか?
桜庭 私は今回保育士の役なんですが、実際に私の母も保育士をやっていて、子供たちの接し方を母に聞きながら演じました。保育園のシーンは母にもすごく見てほしいし、(母も)楽しみにしてくれています。

――保育士を演じる上でアドバイスをもらったりは?
桜庭 母からは、「予想外の答えが返ってきたり、自分が思っているようにうまくはいかないから、いろんなシチュエーションを考えながら、挑んでください」というアドバイスを頂きました(笑)。現場も楽しかったですが、まず(子供は)背が低いから子供たちの目線に合わせて腰を下げてお話したり、うまく話が伝わるように話したりといった保育士の大変さも感じましたね。

愛実の親友役・大島蒼衣を演じる舞木ひと美©️UNCHAIN10+1

■製作チームと同じ思いで作り上げた作品 桜庭のアイデアから現場で追加されたシーンも

――特に印象的だった共演者とのエピソードを教えてください。
桜庭 撮影中は、親友役の舞木(まき)さんと同じシーンが多くて、友達ならではの関係性とか距離感を話しながら役を作りました。今回の映画は『UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン)』というチームが制作しています。彼らは、もともと俳優で、今回は“出演者”としても“プロデューサー”としても、今作に携わっています。舞木(まき)さんもその一員でプロデューサーでありながら同時に、現場で動いている姿と役に向きあっている姿のギャップすごくかっこよくて、素敵でした。

――監督と脚本を務めた山本透さんは、どんな方でしたか?
桜庭 今回、監督が、この作品は「必ず作り上げたい」「今の時代に作り上げたい」という思いから始めた自主制作映画です。スタッフや私のように出演者も監督ご自身でお声かけされたんです。私もそのお話を聞いて、すごく思い入れ深く大切な作品になりました。監督にも感謝しています。

――撮影中の裏話などはありますか?

桜庭 後半に部屋で1人のシーンがあるんです。そこはもともと台本に無かった実シーンでした。自分の感情を出さなかった愛実(めぐみ)に感情を出せるようなシーンが1つ欲しいです」と、自分の想いを監督とお話をさせてもらって、出来上がったシーンですね。クライマックスにもつながるシーンになったと思います。愛実(めぐみ)という人がどういう人なのか分かるシーンかなと思うので、そこも注目して見てほしいです。

©️entax

■震災から12年 すごく意味のある映画

――このインタビューを見てくれる皆さんへメッセージをお願いします
桜庭 今回の映画は震災復興をテーマにした映画ではないのですが、通じるものがあると思うし、震災から12年が経ち、(3月10日)に全国で公開されるというのはすごく意味のあることだと思います。震災でつらい 思いをした人も、癒えない傷を抱えながら生きている人もいるかもしれません。震災以外にも傷つく経験はたくさんあると思います。この映画は傷ついた心を少しでも癒やせるような、観終わった後に「隣の人の手を取ってみよう」「温かい声に耳を向けてみよう」と人とのつながりを感じられる作品になっています。ぜひたくさんの方に観ていただけたらうれしいです。

【桜庭ななみ Profile】
1992年10月17日生まれ。鹿児島県出身。映画『最後の忠臣蔵』(2010年)で日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞、NHK連続テレビ小説『スカーレット』(2019年)や東海テレビ『13』(2020年)に出演。現在『有り、触れた、未来』に佐々木愛実役で出演中。今秋には韓国オムニバスショートムービー『深夜怪談:真夜中に一人で』が控えている。

【作品情報】
『有り、触れた、未来』全国公開中

彼氏を事故で失った、元バンドマンの女性(桜庭ななみ)。30歳を過ぎても、ボクシングを続けるプロボクサー(松浦慎一郎)とその妻(金澤美穂)。1分1秒でも長く生き、娘の結婚式へ出席したい、末期癌(がん)と闘う女性(仙道敦子)。将来に不安を感じながら『魂の物語』を演じる若い舞台俳優たち。そして、自然災害で家族を亡くし、自殺願望を抱く中学生の少女(碧山さえ)。妻と息子を亡くし少女の父親(北村有起哉)も生きる希望をなくしていたが、傷ついた娘のために、再び生きることに立ち向かいだす。そんな2人を懸命に支える年老いた祖母(手塚理美)、優しい親友(鶴丸愛莉)と担任教師(宮澤佑)。たくさんの人々の思いを受けて、少女の心は、少しずつ変化し始めるー。
全ての登場人物が抱えている問題は、角度は違っても全て『命』と向き合った物語。
いくつもの物語が、複雑に折り重なり、それぞれの人生が交錯する。
『支え合い、分かち合い、何度でも立ち上がる』それは、『ありふれた物語』であると同時に『有り、触れられないモノ』の哀しさと『有り、触れられるモノ』の尊さを教える。

出演:
桜庭ななみ、碧山さえ、鶴丸愛莉、松浦慎一郎、高橋努、宮澤佑、舞木ひと美 
高品雄基、谷口翔太、岩田華怜、金澤美穂、淵上泰史、入江甚儀、麻生久美子 
萩原聖人、原日出子、仙道敦子、杉本哲太、手塚理美、北村有起哉

監督・脚本:山本透
原案:齋藤幸男「生かされて生きる-震災を語り継ぐ-」(河北選書)
主題歌:THE武田組「こどもの日」 
共同制作:青い鯉のぼりプロジェクト
配給:Atemo
公式サイト:https://arifuretamirai.wixsite.com/home
公式Twitter:https://twitter.com/arifuretamirai
公式Instagram:https://www.instagram.com/arifuretamirai_movie/

ヘアメイク: SAKURA(まきうらオフィス)
スタイリスト: カン チェラン

写真提供:©️UNCHAIN10+1
©️entax

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