アニメ『葬送のフリーレン』 ヒンメルから託された“記憶を未来へ連れていく役目”に視聴者、感涙「心に響いた」
2023.12.27 06:3012月22日に放送されたアニメ『葬送のフリーレン』第16話『長寿友達』では、400年生きるドワーフ族のフォル爺と久々の再会を果たす。昔話などに花を咲かせるフリーレンの柔和な表情が際立つ中、多くの視聴者の心を打ったのが、かつて勇者ヒンメルとの会話で生まれた「記憶を未来に連れていく」という言葉。そこに込められた思いは、“人の心を知る旅路”を続けるフリーレンにしっかりと受け継がれていた……。
(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)
◆400年守り続ける、歴戦の老戦士
勇者ヒンメルの死去から29年後。“一級魔法使い”の資格を得るために魔法都市オイサーストを目指して旅を続けるフリーレン一行は、広大な畑が広がる北側諸国クラー地方を訪れていた。なんでもこの近くの村には、フリーレンの“長寿友達”が暮らしているという。その友達はドワーフの戦士でかなりの強者。彼女は「フォル爺(じい)」と呼んでいた。ドワーフの寿命は300年ほどだが、フォル爺はもう400年近く、その村を守っていた。「死ぬ前にゆっくり話がしたくてね」。旧友を訪ねる理由をうれしそうに話すフリーレン。確かに1000年以上生きているフリーレンと昔話ができる人物はなかなかいない。「たまにはこんな寄り道があってもいいかもしれません」。普段は時間の浪費を嫌うフェルンも、今回ばかりはフリーレンの気持ちを尊重していた。
目的の村が見えてきた。村の入り口には枝を垂らした大きな木。そして小さな岩に腰かける赤マント姿の老人がいた。その傍らには、鞘(さや)に収まった剣が一振り。「フォル爺、久しぶりだね」。フリーレンが声をかけると、老人は鉄かぶとの隙間からシワをたっぷりと蓄えた細い目をこちらへ向ける。「どう?歴戦の老戦士って感じで格好いいでしょ」。誇らしげなフリーレンをよそに、しかしフォル爺は「はて、誰だったかな?」ととぼけ顔。「よぼよぼじゃねえか……」。シュタルクがそう口にしてしまうほど、はたから見ればフォル爺はボケてしまった普通のおじいちゃんだった。
ところが刹那、シュタルクの体が宙に浮いた。かと思えば、そのまま前のめりに地面へと倒れる。あまりに突然の出来事に一行が面を食らっていると、フォル爺がゆっくりとつぶやいた。「戦闘での死因の多くは油断だ。魔族にも人にもこれが一番効く」。その手には剣の収まった鞘が……。なんとフォル爺は、一瞬のうちにシュタルクの足元へ一撃を入れていたのだ。「ワシが剣を抜いていたら足を失っていたぞ」。フォル爺の厳しい“手ほどき”にシュタルクは素直に反省した。
フォル爺の“ボケたフリ”を見抜いていたフリーレンは、「相変わらず卑怯(ひきょう)な戦法だね」と旧友の変わらぬ様子に安堵(あんど)の声を漏らす。「フリーレン、歓迎する。ゆっくりしていってくれ」。フリーレンの口元がゆるむ。宿屋を見つけるや否や、さっそく村の住人に「10年泊まりたいから仕事紹介して」とお願い。すかさずフェルンから「1週間までですよ」と厳しいツッコミが入るのだった。
村に滞在する間、フェルンとザインは村人からの依頼で畑仕事などを手伝うことに。一方、油断を指摘されたシュタルクはフォル爺のもとで修行に励む。そしてフリーレンは、1週間のほとんどをフォル爺との“おしゃべり”に費やした。2人の様子を遠くから眺める村人が、ふとつぶやく。「しかしフォル爺さんに友人がいたとはな。あんなに楽しそうに話しているのは初めて見たよ」。それを聞いて、フェルンが2人の様子をうかがう。フォル爺と出会ったばかりの彼女には、その表情の変化は見てとれない。だが少なくとも、フリーレンが普段よりも柔和な表情を見せていたのは明らかだった。
フェルンたちが食事の準備をしている間も、食事が終わってからも、フリーレンとフォル爺はおしゃべりを続ける。山菜採りに出かけても、村中を散歩しても、きっと昔話に花を咲かせていたのだろう……。400年近くこの村を魔物や魔族から守ってきたフォル爺は、村人たちにとってまさに守り神のような存在だった。ただ一つ、なぜフォル爺が村を守るのか、その理由だけは誰にも聞かされていなかった。
◆記憶を連れていく役目
「1週間はあっという間だね。シュタルクはどう?」「人間は成長が早いな。そこそこ良くなった」。出発を明日に控えた夜、フリーレンは宿を抜け出してフォル爺を散歩に連れ出していた。後ろ手を組み、終わりゆく時間を惜しむようにゆったりとした歩幅で歩く。「楽しい時間だったよ、フォル爺」。振り返ったフリーレンの表情は、とても穏やかだった。そして続ける。「今ではとても感謝してるんだよ?フォル爺は私がヒンメルたちを知る機会をくれたから」
……今から80年ほど前、魔王討伐を目指す勇者一行の旅路の中でフリーレンはフォル爺と出会った。その時もフォル爺は、相変わらず村の入り口にひとり腰かけていた。ヒンメルから村を守り続ける理由を問われても、目をつむったまま「昔の話だ。どうでもいいだろう、そんなこと」とそっけない答えを返す。そんな彼に「人はどうでもいいことに命をかけない」と、ヒンメルは真っすぐに語りかけたのだ。
ヒンメルの言葉は的を射ていた。納得したように「ふぅん」と息を吐いたフォル爺は、シワだらけの目をゆっくりと開けながら遠い昔に思いを馳(は)せる。「ワシは、妻の愛した村を守っているだけだ。人間だった。ワシは遠い昔に交わした約束を果たしているに過ぎん」。脳裏に浮かぶ妻の声、妻の笑顔、そのまなざし……。死者との約束をひたすらに守り続ける自分を、フォル爺は自ら滑稽だと評した。しかし、ヒンメルは言う。「でもきっとその人は、あなたが約束を守ってくれていることをうれしく思っているはずだ」。その真っすぐな声に、まなざしに、フォル爺はヒンメルが魔王を打ち倒すだろうと確信するのだった。
そしてフォル爺は、長寿のドワーフとして1つの提案をする。「ヒンメルという偉大な勇者の記憶をワシが未来に連れていってやろう」。その申し出をありがたい話だと受け取りながらもヒンメルは、自分のパーティーにはエルフのフリーレンやドワーフのアイゼンがいるからと笑顔で断った。「俺はフリーレンほど長生きせんぞ」。すかさずアイゼンが武骨にツッコミを入れる。それならばと、ヒンメルは後ろに立つフリーレンに目をやった。「僕たちの記憶は彼女が未来へ連れていってくれる。そうだろ?」。爽やかに笑うヒンメルを見て、この時のフリーレンはなんとなしに答えた。「別にいいけど」。
……懐かしい記憶を振り返りながら、いつの間にかフリーレンは笑みをこぼしていた。そんな彼女に、ふとフォル爺が尋ねる。「その勇者の顔は覚えているか?声は?」。いきなりの問いに、フリーレンは「全部覚えている」と、珍しく少しムッとした表情で言い返した。「ヒンメルは私が人間を知ろうとしたきっかけだよ?フォル爺が村を守ろうと思ったきっかけと同じで、大切なことだ」。フリーレンに諭されながら、フォル爺は目を伏せたまま言った。「ワシはもう思い出せない。(妻の)顔も、声も、まなざしも……。それでもワシは大切な何かのためにこの村を守っている」。フォル爺の突然の告白に戸惑いを隠せないフリーレンは「冗談が上手いね」と、笑い飛ばすことしかできなかった。
「ところで、お前たちの旅の目的地はどこなんだ?」。フォル爺はまた、突拍子もなく聞いてくる。フリーレンは、魔王城が建つエンデにある『魂の眠る地(オレオール)』を目指していることを告げると、返ってきた言葉に耳を疑った。「そうか、ついに魔王を倒しにいくのか」。……辺りの音が一気に静まり返った。まるで時が止まったようだった。ボケたフリをしていた歴戦の老戦士は、400年の歳月で少しずつ変わっていたのだ。フリーレンの瞳は揺らぎ、思わず言いかける。「フォル爺、魔王はもう……」
だがその時、フリーレンの頬をふと夜風がなでた。落ち着きを取り戻した彼女は、ふふっと笑って続ける。「フォル爺の記憶も、私が未来に連れていってあげるからね」。それも悪くないなと、フォル爺は星空を見上げる。「人生の最後に、お前に会えてよかった」「それ、80年前も同じこと言っていたよ」。2人の“おしゃべり”は、きっと夜遅くまで続いたことだろう。翌朝、村を旅立つフリーレンにフォル爺は「妻の夢を見た」と告げる。そしてシワだらけの目を優しく細めて「お前と昔話をしたおかげかもしれんな」と送り出すのだった。
◆“記憶を未来に……“ 感動の台詞に視聴者から反響多数
今回、SNS上で一番の盛り上がりを見せたのが、記憶が薄れゆくフォル爺にフリーレンが「フォル爺の記憶も、私が未来に連れていってあげるからね」と語るシーン。フォル爺の記憶が曖昧になっていることにショックを受けながらも、勇者ヒンメルから託された「記憶を未来へ連れていく」という役目を全うしようと動く彼女の姿に、視聴者からは「この言葉、心に響いた」「記憶を未来にって表現いいですね」「泣きそう」と感動と称賛の声が多数上がった。
また、“長寿友達”であるフォル爺と楽しげに会話を繰り広げるフリーレンの表情にも注目が集まった。ファンから「こんな笑顔になるんだ(笑)」と言われるほど、その表情は普段とは打って変わって満面の笑み。「楽しそう」「癒された」など、滅多に見られないシーンを喜ぶ声が多かった。
今回で1クール目が終了となるアニメ『葬送のフリーレン』。第2クールの始まりとなる第17話『じゃあ元気で』は、1月5日(金)『FRIDAY ANIMENIGHT(フラアニ)』(全国 30 局ネット)にて放送予定だ。