中村倫也&土屋太鳳 若き日の2人を救った“共通の恩人”とは?【ドラマ『Shrink』スペシャルインタビュー】
2024.8.23 11:45中村倫也主演のNHK土曜ドラマ『Shrink(シュリンク)―精神科医ヨワイ―』。グランドジャンプ(集英社)にて連載中の同名漫画を原作とする本作は、のんびり屋だが優秀な精神科開業医・弱井幸之助(よわい こうのすけ / 中村倫也)と、一言多いが思いやりに溢(あふ)れた看護師・雨宮有里(あまみや ゆり / 土屋太鳳)が働く“精神科・新宿ひだまりクリニック”を主舞台とするヒューマンドラマ。放送開始となる8月31日(全3回)を前に、entaxでは中村たち2人に単独インタビュー。それぞれの好きなセリフやシーン、ロケ地にまつわる裏話などを教えてくれたほか、実はある共通の“恩人”がいたことも判明。土屋が今も大事にしている“10代の頃”の品々など、幅広く聞いた。
“すべての人が気楽に精神科にかかれる日が来ますように…”との思いが込められた本作。中村は自身初の医者役に挑戦。演じる弱井幸之助は、ふわふわとした見た目でありながらハーバードの医科大学院に留学したエリート精神科医。心に悩みやトラブルが起きてしまった患者一人一人の声に丁寧に耳を傾ける。 entax編集部も事前に第1話を視聴させてもらったところ、患者に話しかける中村の優しい声色が特に際立っているように感じた。
インタビューの冒頭、その旨を中村に伝えてみると「ありがとうございます。声優さんに頼んでアフレコしてもらってて」と冗談交じりに返答。“本当は?”と尋ねると、「すみませんね、照れ隠しが激しいもので(笑)」と笑顔をのぞかせた。
◆病と患者を中心に描くドラマ 中村「ちょっとした“心の処方箋”に」
──「パニック症」「双極症」「パーソナリティ症」という3つの疾患、そして患者さんを扱う本作。特に印象的なシーンやセリフはありますか?
中村 僕は、第1話の夏帆さん演じる雪村葵とのシーン。「ベイビーステップ。焦らずゆっくりですよ」っていう弱井のセリフが割と好きです。“何事も一歩ずつ”というのが、人生でも、病とか関係なく大事なんじゃないかなと思うので。「焦らず、ゆっくりですよ」とか何気ない言葉ですけど、ちょっとした“心の処方箋”になると思うので、本当にいい言葉だなと思って演じていました。
土屋 私は、第2話でとある“結婚式”があるんですが、そのあと弱井先生のところに行き、「結婚式、ステキだった〜!」と言って、弱井先生が引き出物のバームクーヘンを食べるんです。そのシーンがすごく好きでした。日常って大切だなと思って…。今いろんなことが難しい時代ですけど“こういう日常を守っていくことが大事なんだな” と、そのシーンを撮りながら感じていました。
土屋 あとは作品全体を通して言うと、ゲストに来てくださる役者のみなさんが本当にとてもステキでしたし、ロケ地を貸してくださった幼稚園であったりとか、“クリニック”で使った建物に住まわれている方など、そういう方々の愛情がこの作品にさらに愛情を加えてくれたのかなと感じています。
中村 あのクリニックも湘南(しょうなん)にあるお家で。スタッフさんが見つけてきてくれてね。
土屋 昭和初期の結構古い建物なんですよね!弱井先生の言葉だけではなく、場所や建物のパワーはすごく大きいと思うので、ロケ地に恵まれていたなっていうのは本当に感じましたね。
◆中村「話すの嫌なんですけど(笑)」 若き日の2人を救った“共通の恩人”
──患者さんと弱井先生の関係のように、おふたりも“誰かに言ってもらった言葉”で救われたような経験はありますか?
中村 僕ね…いろいろなところで言ってるんですけど、若手の頃はあまり仕事がなくて、腐ってた時期があったんです。「なんだよ!」とか「何で俺を使わねぇんだ!」みたいな、居酒屋でクダ巻いているような俳優で…(笑)そんな時に、当時からよくしてくれていたムロツヨシっていう人が、そういう状態の自分を見て「結局、お前どうしたいんだよ。何がしたくて、何になりたいんだ」みたいなことを言ってくれて──。
中村 その時、自分はもう腐っちゃってて、昔持っていた清い気持ちみたいなまっさらな想いが口から出なくなってたんですよ。「俺、ここまで腐ってたんだ」って気付かされて、これはいかんなって思って。ちゃんと自分の人生と、この仕事と、何がしたいんだろうってことを思い直したというか。それをきっかけに、もう一度生まれ変わったかのようにまた仕事に向き合って、人に向き合って……で、今があったりするんですよね。この話をするとムロさんの好感度が上がるので嫌なんですけど(笑)でも、“結局何がしたいんだ”っていうのは、何か突きつけられたなってあの時の自分には思います。
──ムロさんの言葉が一つの転機になったんですね。
中村 今思い返しても超嫌なやつでしたもん僕…(笑)とてもNHKの朝のドラマで癒し系をやるような人間じゃなかった。悪意と毒しかなかった。ほんと、排水溝みたいな人間だったんで──。今はもう、小学校時代の自分にどんどん戻ってきてます。「みんな仲良くサッカーしようぜ!」みたいな(笑)
──土屋さんはいかがですか?
土屋 では、ムロさんつながりで…。
中村 いいよ!あの人の好感度上げなくて(笑)
土屋 以前『真夜中のパン屋さん』(2013年)というNHKのドラマでご一緒してて、私が大学受験してる時だから18歳の時かな──その時にムロさんがババババッって近づいてきて、「なんかやりづらいとこ、ない?何かあったらすぐ言ってね?全然変えられるから!」って言ってくださったのですが、こんな大ベテランの方でも…と驚きました!お忙しかったのにペンを買ってきてくれて、「これでたくさん勉強しなね」って渡してくれたり。それはなんだか気配りも含めて、すごくステキだなって思いました。
中村 たぶん、好かれたくて必死だったんですよ(笑)
土屋 そんなことは(笑)やっぱりそういう能力がないとできないこと、無理してはできないことだと思うんです。今、それをすごく思い出しました。
──その時の“ペン”は今でも?
土屋 ちゃんと実家にあります!当時はほんとにセリフが多い役で、しかもドラマに慣れていなかったので、すごく緊張していて…。初日、現場に入った瞬間に「(頭を抱えながら)あと3か月無理かもしれない…」みたいな状態で(笑)。でも、主演の滝沢秀明さんも含めて、ムロさんがそういうなんだか温かい空気を持ってきてくれたので、それはすごくパワーをいただいたなって気がします。10代の時はすごく苦しかったので、その時に出会って、いただいたものは残してるんです!
別の外現場でも、ヒーターの前に行けずに学生だったのでスカートで寒いなーって思っていたら、小日向文世さんがカイロを持ってきて「寒いでしょー、これであったまりな」と言ってくださって──。“あっ、自分も周りに気づけて、カイロを渡せる人になろう!” と思ったきっかけです。そのカイロも、大切に今も神棚のところにありますよ!
──逆に、ご自身で行っているメンタルケアはありますか?
中村 困ったものであまり悩みもない人間なので、メンタルのケアしたことないんです、この何年も(笑)
土屋 たぶん、20代の頃にいっぱい悩んだんじゃないですか?“悩んでても進まないな、じゃあ前向きにやれることやろう!”って思ったのかも。
中村 なんかね、ドライなんだと思う、自分のそういうことに。現実的なことにすぐ思考回路がいくし。あと、若い頃と比較したらどうあろうと仕事があってご飯も食べられて、屋根の下で暖かい布団に入って寝られている時点で超幸せ、みたいな!
土屋 うんうん!
中村 だから、(悩みは)なんにもないんですよ(笑)
──土屋さんはどうでしょう?
土屋 メンタルケアという意味では、やっぱり母と話すことですね。ひとりだと、(手のひらを下げながら)どんどん下に…っていくので、誰かに抑えてもらって(笑)ポジティブになるためにはどうすればいいかとか、それこそ頑張りすぎないようにとか対策をしたり──。母にいい影響をもらいながら乗り切ってます。
あとは、“香り”とかでも幸せを感じます!好きなのはグレープフルーツの香りですね。(隣を見て)たまに、倫也さんも(笑)
中村 はい。土屋太鳳の影響を受けて、今日から…(笑)キャッチコピーは“グレープフルーツ俳優”でいきたいと思います!
土屋 “癒され俳優”じゃないんですか(笑)
──しっかりと記事に書いておきますね(笑)本日はありがとうございました。
土曜ドラマ『Shrink(シュリンク)―精神科医ヨワイ―』
【放送】2024年8月31日(土)スタート〈全3回〉
毎週土曜よる10時~10時49分(総合)
毎週土曜午前9時25分~10時14分(BSプレミアム4K)
【出演】中村倫也 / 土屋太鳳 / 井桁弘恵 / 三浦貴大 / 竹財輝之助 / 酒井若菜
夏帆(第1第話ゲスト) / 余貴美子 ほか
【原作】『Shrink~精神科医ヨワイ~』原作/七海仁 漫画/月子 (集英社グランドジャンプ)