特撮作品のミニチュアを当時の姿に戻す“修復師”原口さん “エヴァ”庵野秀明監督らにも影響を与えたスゴイ人だった

2024.9.20 11:10

今回、特別に収蔵庫を見せてもらうことに。そこには昭和30年代から近年に至るまで、数々の映画やテレビの特撮作品で使われたミニチュアが、所狭しと並べられていた。メカやヒーローだけでなく、古い民家や壊れたビル、廃墟(はいきょ)になった国会議事堂などあらゆるミニチュアも展示されている。その多くは原口さんが撮影所から“拾ってきた”ものだという。
 
そんな収蔵庫の中で原口さんが最も思い入れが深いというミニチュアが、“万能戦艦・マイティ号”。特撮ドラマ『マイティジャック』で使われていたこの戦艦は、そのフォルムのカッコよさだけでなく、陸海空すべてを網羅する“万能”ぶりなどから多くの特撮好きの子どもたちをとりこにしていたのだ。
 
小さい頃「ウルトラマン」が大好きだったという原口さん。親戚が東宝の録音技師だったことから、当時撮影現場に遊びに行かせてもらったこともあったという。そこでミニチュアや怪獣づくりの現場を目の当たりにした原口さんは、使い終わって捨てられていたミニチュアを集めて持ち帰っていたという。この経験が修復師としての活躍につながることとなる。
 
中学生になった原口さんは、特撮好きが集まるサークル『怪獣倶楽部』に入り、週に1度集まっては特撮談議に花を咲かせていた。その内容をまとめた会誌なども作られていたという。この経験もあってか、『怪獣倶楽部』のメンバーは後に特撮の専門書やムックなどを書いたりすることもあったという。
 
原口さんはその後、先輩から頼まれるがままに特撮美術作成の仕事を行うようになり、さらに独学で特殊メイクの技法も身につけてしまった。『帝都物語』で原口さんが行った特殊メイクは海外の映画祭の特殊メイク部門でグランプリを受賞し、一躍その世界で名が売れることとなった。
 
庵野監督、樋口監督と出会ったのもこの頃。そして1995年、樋口監督の出世作となった“平成ガメラ三部作”で、樋口監督は原口さんに怪獣の造形を依頼。怪獣造形専門の会社もあった当時、原口さんは特殊メイクで名が売れた自分がその仕事をするわけにはいかないと二の足を踏んでいたが、樋口監督は「怪獣を作ってほしいというより、役者を設定してほしい」と原口さんを口説き落としたという。

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